風景の移植
引っ越しが終わり、荷解きの作業をしている。思ったより荷物が多く、一度に整理する気にならなかったので、少しずつ毎日やっていく事にした。
「日用品」と書かれた段ボールの中身を出していくと、底にA4大の写真がいくつか入っていた。その中に前の住まいから見えた風景を撮ったものが入っていたので、それを机の前の、すでに写真が貼ってある場所に貼った。
貼ってある写真を見ると、結構いろんなことを思い出して驚く。撮られた風景そのものだけではなくて、写真そのものに付随する事 ー引き伸ばした時の苦労とか、焼き増しして人にあげた事とかを思い出す。
張られた写真は壁になじんで、もとの、写っていた風景とは違う、新しい風景になった。
いつのまにか建った家
3月まで住んでいたアパートの向かい側は崖になっていて、
その上には古い住宅が建っていた。
ある日その住宅が取り壊され、空間がぽっかりと空いてしまい、
眺めるたびに違和感があったが、すぐに普通の風景になっていった。
すると今度はそこに新しい住宅が建ち始めた。
また違和感が生じたが、これも慣れてしまった。
散歩の風景
遠いとはなんだろうか。
遠い、という事を考えている。
視野の中心だけ解像し、あとはぼやけることだろうか。
春先の雪
この時期の雪は堪える。降る前日は20℃を超えていたのに、急に気温が下がり雪が積もったりすると、ビックリしてしまう。
バスに乗って移動していると、中学生が大量に乗り込んできた。何だろうかと思うと、確か今日は高校受験なので、それでだろう。なぜか受験や入学の時期に雪が降った思い出が多い。大学受験の日には大雪だったし、小学校の入学式も大雪だった。
春の慌ただしい時期と大雪の記憶が重なっている。
雪が降っていると遠景が霞んで、遠くが遠くらしく写る。そんな中住宅街を歩いていると、今歩いている道の先が見えなくなっていて、独特の風景が見られる。いつも感じる住宅街の無機質さが強調されていて、さみしい気分になった。
以下その風景