思い出の寿司
もてラジを聞いていたら、野菜の寿司がおいしい、という話をしていた。ラジオ内ではヤマゴボウ、ナス、かっぱ巻きなどを紹介していた。私は野菜の寿司の中だと、柴漬けの巻きずしが好きですね。
記憶をたどってみると、確かに握り寿司ではなくても、おいしい寿司、印象深い寿司にいくつか思い当たる。少し書き出してみよう。
・米だけの寿司
これは隠岐の島後のフェリーターミナルの売店で買った寿司だった。松の枝ぶりの形に固めたすし飯の中央に、食紅で色付けした飯が包まれているという、米オンリーの寿司だった。昔のごちそうという雰囲気で、散らされたゴマが効いていておいしかった。
・鯖の姿ずし
これはR321沿い、土佐清水の「加久見ふれあい市」という物産市で買ったすしで、特筆すべきはそのサイズだ。500mlペットボトルより二回りくらい大きい鯖の腹に、パンパンに酢飯が詰まっていた。頭も「つきっぱなし」とでもいうようにでかでかと付いていて、味はやたらと酸っぱい。少し柑橘類の香りがした。驚くべきは真夏なのに常温の棚に並べられていたことで、単なる味付けとしての酸っぱさではなく、腐らせまい、という意思を感じる酸っぱさだった。また、その近くの布という集落の商店で、同じような作り方のカマスの姿ずしも売られていて、おいしかった。どちらもやたらと安かったと思う。
・サンマ寿司
これは熊野一帯に分布している寿司らしい。熊野市駅の目の前にある「喜楽」というお店で初めて食べた。(店頭の食品サンプルがただれて黒くなっているような、ナイスな店だ。)北の海から熊野のあたりまで回遊したサンマは、脂が抜けてしまうという。それを酢で絞め、腹に飯を詰めたものがサンマ寿司だ。青魚の酢で絞めたのはなぜあんなにおいしいのだろう。値段も1匹ぶん500円ほどで手ごろだった。「喜楽」の近所の弁当屋では、マメアジを姿ずしにしたものも売られていて、姿ずしに対する執念を感じた。
・いなり寿司の中身がそばに置き換わったもの
これは私の母の実家のあたり、諏訪湖周辺で出る田舎寿司らしい。いなり寿司の中身の酢飯を、そばを細切れにしたものに置き換えたものを想像してください。葬式や法事の時によく出されていたので、これはごちそうだったのだろう。わさび醤油で食べるとおいしい。考えてみるといわば「乾式きつねそば」とでもいうべき食べ物だな。
寿司は、旅行だったり、晴れやかな行事の記憶とともにあって、いいものですね。これからも旅先では寿司に気を付けて、食べていきたいと思う。